「ふっ…。当然の報いさ。母さんはあいつに捨てられて宿屋を勘当されたんだ。母さんは僕が邪魔なはずなのに僕を捨てようなんてしなかった」
「…………」
「僕はね、それが嬉しかったんだよ。捨てないでくれた母さんが…────。────でも…それでも母さんは僕を殺そうとした」
悠は百面相のように表情が二転三転していた。
ひすいにとっては今までの悠は余裕な笑みを向けていた印象が強いため、こんな悠を見るのには驚いた。
さらに悠の話は続く。
彼は、完全に沈んでしまった陽から代わって昇った月を遠い目で見つめていた。
「歳若くして産んだ命は彼女にとって重かった。もう、壊れてたんだ」
「壊れてた…」
「だから僕が殺してあげた。母さんを楽にするために…。そして、死して愛した男と結ばれるために」
─────愛した男と結ばれるために……
その言葉を発したとき、悠の顔は妖しく笑い、こちらを向いた。
その様子がどこか妖(あやかし)にでも憑かれているような気がして、ひすいは身構えた。
「母さんの髪と源九郎の髪を僕の愛用の椅子に敷き詰めているんだ。僕の椅子、悪臭がしただろ?あれは僕が殺してきた動物たちの毛皮の所為だ。あれに二人の髪も含まれているんだ」


