「逃げる?君がかい。……そんなことをして何の得がある?ここで逃げれば源九郎の死の真相も聞けないし、たとえ逃げてもツバメとトンビが君を追うよ」
悠は視線を左右の男たちに向けた。
長身の男は沈黙していたが、赤髪の男は鼻で笑った。
何がおかしい、とひすいはギロリと睨み付ける。
「まあいいさ。ここに来た時点で君に選択肢はないのだから」
悠はカツカツとひすいへと歩み寄る。
彼女の前に着くと、体勢を屈ませて彼女の顎を艶めかしく持ち上げた。
「おいで。ある場所に着いてから源九郎の話をしよう」
不気味に微笑まれてひすいは困惑する。
悠が親指で下唇をなぞったとき噛んでやろうかと考えたのだが、あることに気付いた。
──────…悠から異臭がしない?
こんなに近くにいるのに、その臭いがしないはずがなかった。
何せ、ひすいは悪臭で目が覚めたようなものだ。
そしてそれは前方にいた悠から発しているものだとばかり思っていた。
それが彼の身体から一切しない。
ならば原因は悠が座するものからするのかと思考を巡らすひすいは、抵抗することもなく悠が歩くその後ろを付いていった。


