ぽつりと言葉を呟いた政宗は次には豆吉を無理やり立たせ、彼の左頬に横から拳をくらわせた。
倒れこんだ豆吉に向かって政宗は叫んだ。
「ふざけるなっ!」
「…っ!」
「『ひすい』と呼ぶなだと?そんな勝手極まりないことを聞き入れてくれるとでも思ったか!俺は大名だぞ。甘たれた言葉を受け入れてやるほど優しくはないっ!」
豆吉は殴られた頬を手で押さえた。
血の味がする…。
悔しいほどに滲んだその味を舌全体が感じ取る。
確かに、政宗の言う通りな気がする…。
「ひすいを愛しているなら、何故俺を頼るのだ。貴様自身で助けるのが男というものだろ」
豆吉の心で何かがプチンと切れた。
力を無くし、両手両足を地につけた。
そして、思い切り自らの拳を地面に何度も、何度も打ち付けた。
「ちくしょっ…。ちくしょぉぉおおぉおおっ!」
豆吉の叫び声が中庭を───否、城全体に響き渡る。
その声を聞きつけて小十郎が跳んできた。
「政宗様…っ!こやつは…!」
その声を背中で受け止め、政宗は小さくなった身体を見つめて言った。
「…小十郎。これをひすいのいた部屋へ連れてけ」
「なっ…。しかし、政宗様…────」
「………………頼む。連れていってくれ」
小十郎からは政宗の表情は窺えない。
だが彼の言葉には少なからず痛み入る感情が混じっているようであった。


