奥州の山賊






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一方、庭先の二人は仲良く手を繋ぎながら歩いていた。




「あ、見てください!母様、あれが桜でごさいます。春になれば桃色の花々を咲かせて魅了してくれます」



「へぇーー、俺の森は桜なんて目立ち過ぎちまうからねぇよ」



「そうですか…。では、春になりましたらばまたこちらにお伺いください!」




「お、おぉ…」




にっこりと微笑む梵天丸にひすいは困っていた。



いや、この際梵天丸がどのような表情であるかは関係がない。


あるのはこの口調である。



―――――な、なんとかならねぇかな…。




「なぁ、梵天丸はいくつなんだ?」



「五つです」




五つでこの口調って……

一体どんな教育したんだよ。




ひすいがその当事者へ悪態をついていると、向こうの塀の上に見馴れた顔がいた。




「姉貴っ!」



「豆吉…?!―――――一体どうしたんだ」





それは、側近の豆吉であった。




彼の顔色は蒼白で、そこから事態が深刻であることが窺える。




この時、賢明である梵天丸は侵入者の報告を迷ったが、母の知人ということで声を上げることはしなかった。