「止めておけ、ツバメ。その女は悠のものだ」
風の正体はトンビだった。
ツバメは舌打ちをする。
「わーってる。ましてや手なんか出したら完全に殺されるもんな」
「わかっているならいい。そら、帰るぞ」
「…………」
二つの影は一瞬のうちに消え去った。
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大変なところを見てしまった。
「姉貴…っ」
確かあの二人は<獅子>の者で悠の側にいた…
豆吉は二人に気付かれないように気配を消して木の影に隠れていた。
ひすいの傷がまだ気になり、跡を付けてきたらあの一部始終を見た。
豆吉でなければあの場に乱入していたことだろう。
もっとも、その者が生きて帰れる可能性は限りなく零に近いが。
だが豆吉はできなかった。
何故なら、二人とは顔を知る者同士であるため、ひすいに自分が<獅子>に加担していたことが知られてしまうかもしれなかったからだ。
だがこれも豆吉にとっては後悔の念が募る。
おかげでひすいは連れ去られてしまったのだ。
「俺が…、俺が不甲斐ないばかりに……」
豆吉は地面に突っ伏し、土を握り締めた。


