「ともかく一緒に来てくれさえすれば何もしないからさ」
─────…怪しい。
果たしてこの男の言うことを素直に受け止めてもいいのだろうか。
ひすいは一寸も警戒心を緩めないまま顎を引いた。
刹那、…────
「…………!」
気付いたときには手遅れで、赤髪の男はどこに隠していたのか、鞭らしきものをしならせるとひすいの両腕を器用に縛りつけ、そのまま引き寄せた。
その間はまさに目と鼻の先…──
男に先程までのおチャラけた雰囲気はなく、人が変わったような瞳でひすいの眼を射ぬく。
「あんたに拒否権は無い。悠がお呼びだ」
さらに低い声で囁く。
「…………悠が、だと…───────っ?!」
ひすいが紡いだ言葉の後に、男は彼女の首の後ろに衝撃を与えて意識を失わせた。
気を失って倒れかかるその身体を受け止め、抱き上げた。
「………まったく、気の強い女だよ。一瞬俺が本気を出すなんてな」
じっと見つめ、片腕だけで彼女の体重を支え、空いた残りの手でそっとその頬を撫でた。
そしてその手は開きかけた唇をなぞる。
「誘ってんのか、本当に塞ぐぞ」
赤髪の男がひすいの唇に顔を近付けた瞬間、突風が吹き荒れた。


