奥州の山賊






小十郎がわざとらしく咳払いをした。





「そろそろ…、ご出立した方がよいかと…」






「…………ああ。じゃあな」






ひすいは歩きだす。





背中越しに聞こえる梵天丸の声に胸が締め付けられる気がする。




離れたくない。





そう身体が主張している。

だが、それは叶えられないもの。






梵天丸のためにも、そして政宗のためにも、自分は傍にいてはいけない存在なのだ。






それを心にしっかりと留めて歩く速度を上げた。















─────じきに梵天丸の声は遠退いた…












────
──────




それからしばらくして…──





ひすいは久しぶりに<鷹>に帰ってきた。



到着一番に駆け寄ってきたのは豆吉だった。


彼は真っ青な顔でひすいの至るところを凝視し、それから彼女が脇にさらしを巻いていることが確認できるとぎゅっと唇を結んだ。







「それ…、平気か?」




「あ?……ああ、これか。政宗さんのとこで何者かに刺されたんだ」






ひすいはそっとそこを撫でた。





まだ触れるだけで熱を帯びる。

解毒剤を口移しした男の言うようにきっと傷痕は遺るであろう。








「───────…わりぃ」





「え?何?」






ボソッと呟いた声はひすいには届かなかった。



彼女は聞き返したが、豆吉は何でもないと言うように首を横に振り、力なく笑って言った。





「ついてきてくれよ、姉貴。俺の傷痕に良く効く薬を塗るからよ」



「あ、おぅ────」