政宗は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「まさか…。高貴な女が自らの手を汚すと思うか?ましてや俺を醜くいと考えているのだ。そんな血を浴びようとはしないだろう」
「なら、どうやって…」
「ふっ…。お前のような山賊にはわからんだろうが、金のある人間は何でも人を操ることができる。母上は世に優れた剣客を雇っては俺を殺そうと試みた。─────…もっとも、全て俺と小十郎で返り討ちにしてやったがな」
誇らしげに語るその声とは裏腹に、政宗の顔は引きつってしまいそうになるほど目を細めていた。
「政宗さん…」
「ん?何だ」
政宗が顔をこちらに向けたとき、それに合わせるようにしてひすいは彼の頬に触れた。
「………!」
不意討ちに政宗は少し強張らせたが、ひすいの包む手のひらによってすぐにそれは元に戻った。
「あんたの眼は綺麗だよな」
左の隻眼には自分が映っていた。
それほど、彼の瞳は澄んでいるのだ。
しかし政宗は悲しそうに瞼を閉じた。
「………世辞はよい。俺自身、この眼は醜いと思っているからな。お前に気を遣わせてしまうほど俺は弱くない…────」