奥州の山賊









「………………すまぬ。お前の過去を考えずに、俺は…────」




政宗は唇を離し、申し訳なさそうに目を閉じた。




そんな彼に向かってひすいは大きく首を振る。







「あんたの所為じゃねぇよ…。ただ、まだ…怖くて─────」






ひすいは首筋にある赤い痣(あざ)に触れた。




あの時ほどはっきりとは写ってはいないが、まだ跡は残っている。





その触れていた指を政宗は優しく自分の手で包み込んだ。





政宗の体温が伝わり、気持ちがほぐれていくようだった。






ひすいはそんな彼を見上げる。





その彼はじっと触れた痣を見ていた。



隻眼は細められ、そこだけがひすいとは異なるもののように、冷えきった瞳で見つめていた。


優しい手つきとは裏腹に、氷のような視線がひすいの肌を射ぬく。





ひすい自身も悠の行為は許せないと思ってはいるが、政宗も愛する女にこのような傷をつけたことを遺憾に感じているのかもしれない。






「……政宗、さん?」






ひすいが遠慮がちに声をかけると、政宗ははっとして我に返り、また先程までの優しい顔つきになった。







そして、ひすいの上から退いた。




縁側へ座り直し、政宗は寂しそうに月を見上げる。






ひすいは政宗が退いた後の冷たい風に身震いしながら彼の隣に座る。






政宗を見つめ、それから彼の視線の先の月を見た。