奥州の山賊








─────…一体どうすれば、こんな状況にできるのだろうか。




意識はしっかりあったはずなのに、そこの記憶が曖昧である。














ひすいは政宗に押し倒されていた…───







目と鼻の先に政宗の隻眼があり、その澄んだ瞳はまっすぐとこちらを見ている。





垂れ下がってくる彼の前髪が頬を掠めてくすぐったい。







「……………やはり、止めだ」





「え…」






何が『止め』だというのだろう。



心なしか切なく見える彼の表情に何かモヤモヤした心が芽生えた。



これ以上政宗を合間見えることが出来なくなってしまうのだろうか…──────










それは…

そんなの…──────








「────嫌だ…」





不思議とその口は拒絶の言葉を述べていた。






「俺は…、この先も政宗さんといたいよ。だから、『止めだ』なんて言わないでくれよ────」






ひすいの瞳からは一筋の涙が流れた。











自分はこんなにも泣き虫だっただろうか。



人と居なければ心寂しいと思うような女だっただろうか。









………否、それは違う。





人が誰でもいいわけではない。




『政宗』でなければならないのだ。










そうだ。







この涙は政宗を思ってのものなのだろう。




こんなにも辛いのは、きっと彼に惹かれているからだ。









やっと、わかった…─────