「ひすい………、お前─────」
「あ、あぁ!……そ、そういや俺はこれから廁へ行くつもりだったんだ!悪ぃけど、またあとでな政宗さん…!」
そう言ってひすいはあわてて立とうとした。
しかし、中腰ぐらいまで体勢を上げたところで自由がきかなくなった。
同時に、腕に圧力がかかる。
赤面しているのは百も承知で、そんな顔を政宗に見られるのが嫌だった。
否、恥ずかしかった。
自分を止めたのは無論、政宗であり、彼は振り払おうとする手を掴んだまま離さない。
「こちらを見よ、ひすい」
視線は自分へと注がれているのは知っていた。
だが、そうは言ってもひすいの羞恥心がこれを許さない。
「………………」
黙ったままひすいは視線を逸らしていると、政宗の落胆のようなため息が聞こえた。
その音に、何故か心が絞めつけられた。
奥歯を噛み締めるほど苦しくて、辛い。
いつしかひすいは赤面の代わりに涙を堪えていた。
「……………どうしても、向かぬのだな」
政宗の呟きが聞こえた刹那…─────


