ふと夜空を見上げると、そこには月が顔を出していた。
雲という妨げになるものはなく、それだけが目の前に広がる中庭を照らしていた。
そういえば、確かここで政宗が刀を振るっていた。
彼に見惚れ、釘付けになっていると、その背後から影が現れて政宗を襲おうとしていた。
そして、自分は何のためらいもなく…─────
ひすいは斬られた腹に触れた。
そこには何針も縫った跡が生々しく残っており、これは一生消えることがないのだろうと思った。
さらしたくもない腹が月光に照らされているような気がして、ひすいは目を背けた。
──────…背けた先に、『会いたかった人』がいた。
一気に胸が高揚する。
政宗は縁側に腰をかけ、立て膝をして晩酌していた。
その姿が実に様になっていて、また月がそれを際立たせていた。
照らされた端正な顔は若干赤く染まっている。
その艶やかな政宗の姿に言葉を失っていると、こちらの気配に気づいたらしく、嬉しそうに笑った。
そして、彼は手招きをする。
ひすいは黙ったまま政宗の側に行き、隣に同じく腰をかけた。


