部屋を抜き出した理由は二つある。
ひとつはずっと寝かされていたので、身体を動かしたい気分であったこと。
鈍っている身体をどうにかしたかったし、なにより外の空気が吸いたかった。
そしてもうひとつ…──────
──────…政宗に会いたかった。
自分でそう自覚するのは恥ずかしくて、ひすいは足を止めてかぶりを振った。
「………ただ、お礼がしたいだけだっ…!」
素直になれず、もっともな理由をつけて自分を納得させ、本当のそれを奥へと押しやった。
─────…顔が熱い。
恥ずかしくて赤面してしまっているのであろう。
『お礼』という理由を考えたのに、やはり心のどこかで政宗に会いたいという願望を捨てきれてないみたいだ。
足を進める度に思い出され、ひすいはいつのまにか早歩きになっていた。
足から伝わるのも、顔面で感じる冷気も、それが夜だということを示唆している。
──────縁側に着くと、明かりが差した。