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「…………」
─────目が覚めた。
ここが夢かは定かでないが、空気が冷たい感覚がした。
ひすいは上半身を起き上げて、襖の奥へ神経を注いでみたが、廊下はおろか辺りに人の気配がしなかった。
不審に思い、体を立たせてそっと襖に手をかけて開けてみると、そこは冷たくなった空気が漂うだけの真っ暗な空間が続いていた。
─────あぁ、夜なんだ。
この物静かな雰囲気にそうだと悟る。
ひすいのいた四畳半の部屋に光が差し込めるような隙間はなく、今がどのくらいの刻なのかよくわからなかったのだ。
─────皆が寝入っているなら、俺が廊下をうろうろしてても特に怪しまれることはないだろう。
とにかく人に出くわさなければいいのだ。
幸い、家臣や侍女の気配は全く感じられない。
─────ヒト…、ヒト…、
ひすいは廊下へ踏み入れた。
慣れない板張りと足の裏にまとわりつく感覚がどうも好かないが、そのまま進むことにした。