まっすぐとそう言われ、政宗は一瞬戸惑いをちらつかせたが、すぐに表情を元に戻し、ひすいの髪を一房手にして軽く口付けた。
「俺は、俺と同じ想いであることを望む。あとは、お前自身次第よ────」
それから政宗はひすいをそっと手放し、立ち上がった。
「じきに梵天丸が来るであろう。俺は自室に戻るからな。何かあったら梵天丸に言伝しろ」
政宗は襖を開け、一歩出ようとしたところで一度振り返った。
「────お前の気持ちはお前自身から俺に伝えてほしいのだ。俺から言わせるのではなく……、な。いつまでも待っている」
ゆっくりと微笑み、それから出ていってしまった。
襖が完全に閉まると、握り飯を持ったまま走るでない、転ぶぞ、という政宗の声が聞こえた。
はい、父様！と襖越しに梵天丸の大きな声がする。
自分とは対称的な彼の姿に羨望しつつも、ひすいはクスクスと笑っていた。
「失礼しますっ！」
あからさまに声が裏返っている。
どうぞ入れ、とひすいが言うと梵天丸は技法に倣った手つきで襖を開けた。
開けたまま、入ってこない。
どうしたのだろうかとひすいが見やると、梵天丸は正座してちょこんと部屋の前に座っていた。
その瞳は期待に胸を躍らせて輝いてはいたが、若干瞬きが多いように感じた。
