ふっと瞳を開けると、そこには小十郎の気配があった。
「小十郎か…」
「左様」
一言呟いて、縁側に座る政宗の斜め後ろに正座した。
「ひすいさん、久方ですね」
「……ああ。『色々』あったそうだ」
「色々?色々とは、如何様(いかよう)な…」
「さあな」
俺が知るわけなかろう、と言うと小十郎は諦めに近い笑みをつくり、それから改めてひすいを眺めた。
「――――それにしても、ひすいさんはまた随分とお美しくなられましたな。これでは、他の男も黙ってはおりますまい」
ふふふ、と笑う声が聞こえた。
政宗はできるだけ感情を殺し、小十郎に振り返って睨んだ。
「その男というのは、お前も入っておるのか、小十郎」
「さあ、どうでしょう?」
「入るならば、その言葉をひすいに申すでないぞ」
「それは、何故(なにゆえ)…?」
きょとんとした顔で首をかしげ、政宗に尋ねた。
彼はまた庭へ視線を戻し、一人で呟くように言う。
「あやつに愛を述べてよいのは、この俺だけだ」
それは小十郎にもしかと耳に入っていて、深々と頭を下げて仰せのままに、とだけ言った。


