「怒ってんのかな?悠にも、あの男にもされて……───」
「ちょっと待て」
ひすいがぽつぽつと話始めたのを政宗は手で制して止めた。
納得のいかない顔つきの政宗にひすいは首をかしげた。
「あの男とは誰だ?それに、『された』とは一体何をだ?そこを話してもらわねば、俺が解せぬであろう」
ひすいはああ、と大して気に留めていないような抜けた声を出した。
「口付けだよ…。知らねぇ男がやってきて、俺に口移しで解毒剤か何かを飲ませたのさ」
「口移しだと───?」
信じられないといった表情の政宗を見て、ひすいは自嘲して笑った。
「俺が動けないのをいいことにさ、あいつは口付けた。それが、俺はどうも悲しいのか…腹立たしいのか…─────」
そう言いながらもなおひすいの瞳からは絶えず涙が流れていた。
政宗はじっとそれを見つめ、ひすいの肩を抱き寄せた。
「……お前は、嫌だったのだろう。助けられたとはいえ、な…。口付けには特別の感情が必要だ。それをひすいは知らずのうちに気づいておったのだろう」
「特別な、感情…?」
「そうよ。…………なんだ、身体はわかっているくせに、心は知らぬのか。──まったく、困った女子(おなご)だな」
政宗はクスクスと笑い、ひすいの頭を撫でた。


