奥州の山賊






「そういうわけだ。俺は失っちまったが、譲ちゃんはずっとそばにいてやれ。そうすることで、伊達殿への気持ちにも気づくからよ…」





「政宗さんのそばにいれば、これはわかるのか?」






ひすいが問いかけると源九郎は大きく頷いた。



それにほっとしたのか、彼女は小さく笑った。






「そうか…、そうなんだな」






そんなひすいを見て、源九郎は近づいてゆき、彼女の頭にその手をのせた。





「あ…──────」





ふいにひすいの口から言葉が漏れる。




それは、彼が生前にもしてくれた行為だった。





死人のはずなのに、そこには変わらない温もりと、ゴツゴツした手の平の感覚が頭皮に広がった。







「譲ちゃん…」






源九郎は身を屈めた。




ひすいの目線の先は、以前にできた獣傷から源九郎自身の瞳へと移される。




彼の瞳の中には、自分が二人いた。






「何があっても、俺は譲ちゃんの味方だぜ?俺は死んじまったが、それでも譲ちゃんを守ることはできるし、伊達殿だって守ってくれるさ─────」





「源九郎…」





「だからな、安心していいんだ。伊達殿を信じてみろ────」






源九郎がまたいつもの如く笑うので、ひすいはぎこちなく笑ってみた。




それに満足したように深く頷くと、途端に彼の全身が光の泡へと変わり始めた。






「源九郎っ────!」





ひすいは必死に手を伸ばすが、掴もうとすればするほど源九郎の身体は泡へと変化していく。





「嫌だ、嫌だよ…。源九郎っ!」





源九郎をかたどっていた泡が天へと上り、やがてそれさえも弾け消えてしまった。