暫しして、今度は廊下の奥から大きな足音が近づいてきた。
ひすいのいる部屋の前でその音が止んだかと思うと、今度も細心の注意を払うように静かに襖が開いた。
「………」
カタン、とそれを閉めると、その人は何かを置いた。
それと同時に水の張った音がしたので、きっと桶だろう。
布に水を含ませたのだろうか、垂れ落ちる水たちが心地を涼しくする。
そしてその絞った布をひすいの額にあてた。
「ん……?」
その人の、首をかしげたように疑問に満ちた声が聞こえた。
────この声は、政宗さんだ…
この声に温かみを感じる。
先程までの緊張しきった心の糸が一気に解れていくようだった。
政宗はひすいの頬にそっと触れた。
「お前…、泣いていたのか」
そう言って涙が流れた跡をすっとなぞっていく。
「大丈夫だ。お前は助かるからな。………俺が、お前を死なせたりはしない」
安心させるように優しく呟き、その手を頬に触れたままもう片方の手でひすいの額にのせた布を一旦取った。
そして、政宗は遠慮がちに額へと口付ける。
「死なせない。俺が命にかえても助ける」


