柔らかいものがひすいの唇を塞いだ。
そしてその口を強引に舌でこじ開け、何かなま暖かい液体を流し込んでくる。
相手の舌から滴り落ちる液体に、ひすいは拒否反応の如く吐き気を催す。
胃から込み上げてくるものを必死に制した。
─────男の舌からはもう何も流れてこない。しかし、なおもその口付けは続いた。
ひすいの唇を舐めまわすかのように、音をたてながら多方向より口付けた。
涙の感覚はあるようで、ひすいの瞳から一筋のそれが伝い落ちる。
「………助けてやったのに、そんな綺麗に泣かれたらこっちが困るんだけど。そんなに美人なんだから、男の一人や二人から口付けぐらいされてきただろ?」
不貞腐れたように男は言った。
瞬間、忌まわしき過去の記憶が蘇ってくる。
─────そうだ。俺は源九郎に拾われる前は嫌というほど男の体温をこの身で味わっていた。
なのに、今さらになって何故涙が出るのだろう?
─────期待、しているのか?
叶うはずもない希望を望んでいたからか?
「まあいいや。これであんたも生き長らえることができるよ」


