「伊達政宗は殺せなかったみたいだね」




「ああ…」






悠が訊ねると、彼はぶっきらぼうに呟いた。






「きちんと僕が話した通りに彼女に言ったんだろ?」





「勿論だ。………だが、あの人は殺せなかった。───なぁ、本当に大将は伊達政宗に殺されたんだよな?」







悠は声もたてずに口角を釣り上げて笑った。




その表情は向こうからではわからないだろう。







「そうさ…。伊達政宗は自分の利益のために彼を裏切り、殺したのさ」





「なら、何故っ!………あの人はあいつの言う事なんて信じるんだよ!」






「ふふ…。君は随分と彼女にご執心のようだね」





「俺は、あの人を愛しているからな。伊達政宗とあの人が接触した今……、もう俺は痺れが切れた。どんな手を使ってもいいっ!早くあの人を俺のものにしなければ、あの人はっ──────!」







ピシャッ─────







何かが土に打ち付ける音がした。




「…うるせぇよ。この洞窟に入って来たんだ、俺たち<獅子>を怒らせない方がいいぜ」






鳴らしたのはツバメだった。





自らが所持する鞭を地面に打ち付けた音だったのだ。






「てめぇっ──────!」





「ここに来るということは、少なくとも<獅子>に味方する者だよな?いくら悠が手を出すなと言っても、そうやって感情を顕にするやつは俺たち<獅子>にはいらねぇ…。ここで、死んでもらうのみだぁっ!」






ツバメが『彼』に向かって駆け出そうとしたとき───






「ツバメ───」





そこには静かに呼ぶ悠の姿があった。