「なんだ、あいつ…?俺、何か悪いことでも言ったか?」



……ともかく、準備は整った。




ひすいは木の枝を飛び越えながら、米沢城に向かった。





―――――
―――――――



政宗と男子(おのこ)らしき人物が庭の池で共に眺めているのが見えた。



ひすいは壁から庭へと飛び降りた。



―――――というのも、ひすいは何とあろうことか門からではなく壁から侵入してきたのだ。



「久しぶりだな、政宗さん」



聞き慣れた声に政宗が振り向く。


すると、あからさまに政宗の隻眼が大きく見開いた。




―――――更に美しくなったか。



服装は粗末な小汚いものであったが、ひすいの頭から足先までどこもより女子(おなご)らしく成長を遂げている。




「…ひすいか。随分と久方ではないか、今までどうしておった?俺はこいつが捨てられたかと思ったぞ」



政宗は男子の頭をぐりぐりと撫でた。



「悪い、色々……あったんだよ」


「色々……?」



「………」



政宗が更に問おうとして口を開きかけたとき、不意に裾を掴まれた。



「父様?この方は誰ですか?」