豆吉は自分の裾をギュッと握り締めていた。
──────この旅の道中で、絶対にこの手で彼女をあんな顔…、いやあれ以上の表情にさせてやる。
そして、それを自分が一番に見るんだ。
そうだ、その時に自分の想いを紡ごう。
彼女が気づくか否かの問題ではなくなったような気がする。
「待ってろよ…」
豆吉は向こうにそびえる岩を見つめているひすいに聞こえないくらいの声でそっと呟いた。
──────
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─────小十郎さんが送りに来てくれた。
もう、それだけで嬉しい。
小十郎自身も言っていたが、きっと政宗が自分のことを言ってくれたのだろう。
その政宗は小十郎より一歩離れてこちらを見ていた。
「見送りありがとなっ!」
「礼には及びません!どうか、どうかご無事にこの奥州にお戻りください!」
────こんなに自分のことを心配してくれると、もしかしたらというような期待が込み上げてくる。
しかし、それがそんな気持ちで小十郎が叫んでいるのではないのだということはわかる。
─────わかってしまうから、辛い…。


