「政宗様に聞きました!道中、お気をつけてくだされっ!」
「……小十郎さんっ!」
─────小十郎?
豆吉は大声を上げている男を見た。
小十郎…、────片倉小十郎か…。
奥州一の参謀だと聞く。
もしや、彼女は伊達政宗ではなく片倉小十郎に惹かれていたのではないか?
────否、それは彼女の表情で一目瞭然であろう。
今まで自分が見たことのない、幸せそうな顔だった。
片倉小十郎には彼女をこんな美しい顔にする術(すべ)を心得ているのだ。
豆吉は心の中で舌打ちをした。
ひとつに、『嫉妬』という言葉が現れたのもそうなのだが、何より彼女の表情を見て嬉しいと思ってしまった自分がいたことに腹が立った。
いつか、自分の手で幸せそうな彼女の笑顔を作るんだと決めていた豆吉にはまだそれを成し得ていない。
だが、片倉小十郎はあろうことか豆吉の目の前でやってのけたのだ。
どれだけ頑張っても、彼女は豆吉の前では眉間に皺を寄せたような表情しかしない。
微笑む、といってもあんなに穏やかではない。


