「……三河に行っている間に小十郎のことを忘れてしまえ。そして、また奥州に帰って来たとき―――俺を好きになればよい」
なんと身勝手なことなのだろう。
しかし、こんな言い方ができるのは政宗だからこそだ。
そんな言動にひすいは思わず笑ってしまった。
案の定、政宗は眉を寄せてむっとしながら彼女をじっと見た。
「何故笑う?俺は本気だぞ」
「いや、おかしくて笑ったんじゃねぇよ。─────あんたらしいな、って思ってさ…」
「俺らしい…?」
「そうさ。その言い方、まさに政宗さんらしいよ」
ひすいは微笑みながら言ったが、当の本人は腑に落ちないらしく、更に一層眉間に皺を寄せた。
「なんか、さっきまでの自分が嘘みたいだ…」
あんなに辛くて、腹立たしくて泣いていたはずなのに、今はどうしてか晴れ晴れとしている。
彼の抱擁の所為か、はたまた優しい言葉の所為だったのか、彼らしい言葉をかけられたからだったかは定かではない。
─────否、全てなのだろう。
もしかすれば、彼の存在自体が自分をここまでにさせてくれたのかもしれない。


