「ならば何故三河なのだ?あんな古狸が住まうような土地に一体何があるというのだ…?」
古狸――――
徳川家康のことを言う。
ひすいも源九郎の情報と風の噂の一部しか聞いたことがないので定かではないが、彼は『太った狸』として近隣の大名から言われている。
その名の如く、腹まわりがやや大きいのだろう。
だがしかし、彼の采配は的確で素晴らしいと源九郎が誉めていたのをひすいは思い出した。
源九郎はひすいをはじめ、女に対しては優しいのだが、男に対しては信用しきった者でなければあの笑顔も、ましてや誉め言葉などもってのほかなのである。
それが徳川家康だけは認め、その気質を誉めていた。
それは、源九郎が<鷹>の男共と彼を同等に扱ったことになる。
―――――こんなことを徳川家康やその家臣に言えば怒るだろうが、何しろ源九郎にとって人間は皆平等なのだ。
城主だろうが、家臣だろうが、山賊だろうが皆同じ人間に枠組みされてしまう。
強いて言うなれば、源九郎の基準である『信頼に値する者か否か』でその対応が変化する。
「あの人は凄いんだとよ。だから、俺が徳川のおっさんに聞き込みしてくるんだ」
「そんなこと、断じて俺が許さん!」


