「案ずるな。俺とお前の子は実際肌を重ねて成そうぞ」
政宗の微笑みとは対称的にひすいの眉尻が吊り上がった。
「こんの、変態城主めっ!」
「行け。こいつは任せろ」
ためらいもなく政宗は冷静に事を進める。
「立派に育てるさ。その代わり、またここを訪れよ」
「…?」
この話の展開の速さについていけず、また政宗の言わんとしている意味を汲み取れないひすいは首を傾げた。
「なんだ、わからぬか?」
政宗は口角をあげて、いたずらっぽく笑ってこう続けた。
「――――こいつの成長を見たいだろう?」
その言葉にひすいはぱぁっと目を輝かせた。
「来る!絶対に来るからなっ!」
ひすいは足が床に着いていないくらあ飛び跳ねながら廊下を駆けていった。
その様子に、政宗は目を閉じてふっと笑う。
「ああ、待っている」
そう呟いた言葉はひすいには決して伝わることはなく、水を打ったように静まりかえった廊下に消えていく。
十六夜の月は既に傾いており、明けの明星が次に待つ陽の存在を示唆していた。