「……もし公務だとしても、私は小雪さんに会えたなら多少の刻は惜しみません」
真顔で小十郎に言われ、小雪は顔を真っ赤にしてうつむきながら、嬉しいです、とだけ呟く。
そんな様子を眺めながら、小十郎もはにかんだ。
どちらもどう話せばいいかわからず、そのまま沈黙に入ってしまった。
依然として、小雪はうつむいたまま小十郎と目を合わせようとしない。
――――小雪は小十郎が贔屓にしている商人の一人娘であった。
その名の如く、雪のように白い肌に、溶けてしまいそうな薄い唇、そして、いつも可愛らしく見つめる大きな瞳。
女人であることに少しも恥じらいのない、女として完璧な娘であった。
また、小雪は何故か小十郎を《景綱さま》と呼ぶ。
確かに、片倉小十郎景綱という名を彼は持っているのだが、皆は小十郎と言う。
この件は小十郎自身も知りえない、小雪だけの秘密らしい。
「景綱さま…」
沈黙を破ったのは小雪だった。
心なしか先程よりも一層赤らめていた。
そして、目が泳いでいる…―――――
「何か…?」


