「小十郎、今は一刻の猶予もないはずです。誰が毒を盛ったのかどうかではなく、父様の熱を早急に対処すべきだと思います」
正論を述べてはいるが、話逸れてしまったのは梵天丸にも非がある。
しかし、小十郎は敢えて是正せずにそのままことを進めた。
「………そこで、ひすいさんにお頼みしたいことがあるのです」
「俺に?」
小十郎は小さく頷いた。
「貴女に、政宗様を看てもらいたいのです」
「母様、僕からもお頼み申し上げます」
二人して額を床に近く寄せて、頭を下げた。
そんな畏まった態度をされるのにひすいが慣れているはずもなく、案の定、当惑しきった様子で瞬きをした。
「構わねぇけど…、何で俺だけ?」
ひすいがそう問うと、小十郎は静かに面を上げて、また閉じられていた瞳を開いた。
「それは、政宗様は貴女様を愛しておられるからです」
「……」
「政宗様は常々より貴女ほど美しい女人はいないと仰っておりました。そんな貴女に看病されるのですから、政宗様の治りもきっと早ようございましょう」
「俺は、それだけで呼ばれたのか……」
「とんでもございません。全ては貴女のその解熱剤のためでございます。先程申し上げましたのは、その延長上にあるにすぎません」


