最小限の灯火の行灯の中に、小十郎と梵天丸がいた。
梵天丸は居住まいを正してから、仰々しく頭を下げた。
「母様、お久しゅうございます。その後、おかわりはありませぬか?」
「ねぇけど…。ぼ、梵天丸はどうなんだ?」
さほど久しいとは思えない、否、昨日会ったばかりではないかと心で思っていたが、ひすいはそれを言うことができなかった。
何故なら、ひすいとしては昨日の出来事を申し訳なく思っていたのだ。
だがしかし、彼がそう強制的に誘導するので、あいまいに言うしかなかった。
一方、梵天丸は不気味なほどにっこりと笑った。
それは、まさに先日見た小十郎の笑顔と一致していた。
「それはまあ大変でございました。あの後、僕たちは瓜と人参を食べさせられそうになったのですよ、この小十郎に」
と梵天丸が目配せすると、小十郎はひとつ咳払いをして話始めた。
「梵天丸様、今はかようなことを申している時ではありませんよ。――――政宗様は瓜のお供にと注がれた酒をお飲みになった後、倒れたのだと…」
梵天丸は無言で頷いた。
「なるほどな、その酒に毒が入っていたってわけか…」
ひすいは腕を組んで、顎を引っ込めた。


