「可能性的には井戸水にも毒、ということがなきにしもあらず…」
「そうか、だからここまで水を汲みに来たんだな?だけどよ、それを小十郎さんがやる必要はねぇんじゃねぇの?あんたほどの身分なら、誰かに頼むくらいできるだろ?」
とは言ったが、小十郎は悔しそうに首を振った。
「誰が毒を入れたかわからない以上、今信じることができるのは自分自身のみです」
「なるほどな…。………――ん?」
ひすいはある過去を思い出す。
「…?どうなされましたか、ひすいさん?」
「そういや、俺…。源九郎から秘伝の解熱剤の調合を教えてもらったことがあるぞ…」
「なっ…?!それは真ですか!」
小十郎もさすがにこれには驚いたらしく、無意識にひすいの両手を手に取って固く握りしめていた。
その人肌が心地よくて、ひすいはわだかまりが解れるのを感じながらも、心の臓を高揚させた。
「……えと、あの――――。小十郎さん、痛いよ…?」
「あ、す…すみません。嬉しくて、つい…」
小十郎はその繋がりをぱっと離した。
それに伴って、ひすいの手は風によってすぐに彼の温もりが消えていってしまったような気がした。
「先に城に行っててくれよ、小十郎さん。あとから準備してむかうからよ」
「かたじけない…!」
うつむいた小十郎の瞳から、涙が滴り落ちたように見えた。


