「御酒をお持ち致しました…」
酒を持って来たのはまだ梵天丸とあまり歳の変わらない女であった。
蚊の鳴くような声でよく聴き取りづらいのだが、まあ、こんな感じに言ったのだろう。
「こちらに持って参れ」
「はい―――――」
侍女はさっと立ち上がると、俺の横で腰を下げ、そっと酒を置いた。
「お前、見かけぬ顔だな。名は何と申す?」
「…かや、と申します」
まるで白雪のように真っ白な指先であった。
そのせいなのか、顔も白い。
――――いや、これは青白い方があっているかもな…。
「かや、疲れておるのか」
かやは身体をびくんと震わせた。
退出しようとしていたのを引き留める形になり、かやはゆっくりとこちらを向いた。
「………それは、何故そうお思いなさるのでしょうか?」
それには自分が一番わかっているのではないのか、と俺はため息をついて言った。
「お前がどれほど大変な仕事をしているかは知らぬが、顔が青ざめておるではないか。……今日はもう寝床に行くがよい」
「でも……」
「俺が小十郎に言っておく。さすれば不安はあるまい」
それでも…、となおも食い下がろうとするかやに最終的には命令だと一言で言い包めてしまった。


