小十郎が下がると、梵天丸は不思議な目で俺を見てきた。
「父様、何故に酒が必要なのでしょうか?」
「うむ。俺は酔ったついでに瓜を食べようと思ってな。どうだ、なかなかの妙案だろう?」
「…僕は素面ですか―――」
「何を言うか、戯け。お前のような童に酒の旨味がわかるわけなかろう」
「うーん…」
それでも腑に落ちないのか、梵天丸は気難しい顔をしている。
俺は口元を緩ませて、梵天丸の頭を撫でた。
「齢(よわい)五つのお前が飲むわけにいかんだろ。お前にはあと十年もすれば飲ませてやる」
「………その時まで、この人参をとっておけませんかね?」
童らしい意見である。
俺はおかしくて、声を立てて笑った。
「それはいかんだろうな!小十郎は気の短い男だからの!」
「やはり……」
すると、障子の奥からか細い女の声が聞こえた。
早速小十郎が手配したのだろう。
何だかんだ言って、あやつも手際がよいものだ。
「入れ」
俺がそう言って促すと、二段階で障子を開けた侍女の姿があった。


