遠くからクスクスと笑う悠の声が聞こえた。
「君のところの頭領さんはずいぶんと艶めかしい声を出してたよ。僕の、口付けでね」
男はキリッと彼を睨むがその場―――ひすいから離れようとはしなかった。
きっと、彼女を助けることが最低条件だったのだろう。
「ああ、そうだ。彼女―――<鷹>の頭は奥州の大名の伊達政宗が好きなんだろ?」
悠は男に向かって軽そうに訊ねた。
「そんなの知るかよっ!」
―――――それは自分の方が知りたいくらいだ。
男は素っ気なく答えた。
「ふーん?まあ、いいや。でも安心して?きっと君も彼女を好きなんだろ?――だったら、これは良い知らせだと思うんだ」
「何だと…?」
悠は一方的に話し終えると笑みを深めて森の中に消えていってしまった。
男は悠の気配が完全に消えるまで、彼の背中が見えた方向をずっと見ていた。
「なんだよ、あいつ…」
男はそう言うと、割り切れたのかまたひすいに顔を向けた。


