奥州の山賊







「君は、僕のものだろ?」




彼女の後ろに影が見えた。





「くっ…――――!止めろ、悠っ!」





『悠』と呼ばれた男は彼女の手首を掴んでいた。




きっと彼女は自分の方に駆け寄りたかったに違いないが、その男が制止したのだろう。





そして同時に、自分はあの男に蹴られて、今この場、この状況にいるのだと理解できた。







「早くしないと…―――――!」




―――――早くしないと?





その言葉から焦りが感じられた。




彼女らしくない。


何に焦っているのかは知らないが、あんな姿は珍しい。






しかし、その焦りを知ってか知らずか、男はその手を離そうとはしなかった。






「大丈夫。死にはしないように手加減したから…」






ぼんやりとした視界だからはっきりしないが、見たところ、悠は後ろから彼女に向かって囁いていた。




こんなにも遠くにいるはずなのに、何故か彼らの言葉一字一句が聞こえてくる――――…


―――――否、自分は感じているのかもしれない。





もしそうならば、自分は長くはないのだろうかと考えてしまう。





―――――ああ、なんとなくだけど、瞼が重たくなってきたな…


それに、何故か眠くもなってきた。





「あ、ね………き――――――」



最期に貴女の名が知りたかった。





視界が狭まり、やがて、全てが闇に包まれてしまった…―――――――