ひすいは前髪を掻き上げて、空を見上げた。
「俺が言ってんのは、別の人だよ…。きっと、手の届かない…―――――――」
悔しそうに見つめている彼女の横顔が切なかった。
――――――姉貴は豆吉でも、伊達政宗でもない誰かのことを…?
だったら、誰なんだ…
この先は訊けそうになかった。
これ以上彼女に疑問を投げ掛ければ、きっと更にあの哀しみを深めてしまうに違いない。
今はそうさせてしまうことが恐ろしかった。
だから、男はただその横顔を口をつぐんで眺めることしか出来なかった。
――――――…ひすいは確信した。
この感情は人を想う気持ちであることを。
それは小十郎に向けたものであること。
人を想うことがこんなにも未知なるものだとは思わなかった。
ひすい自身、理解していたつもりだったからだ。
だがしかし、こんなにもはがゆく、胸苦しいものなのか…?
「姉貴?大丈夫ですかい?」
初めての感覚に戸惑いを覚えていると、先程の男が隣から気遣いの言葉をかけられた。
「あぁ、平気だ…」
と、一応返しておいた。


