「梵天丸。お前、人参が嫌いなのか?」
改めて訊ねると、梵天丸は顔を覆った指先の間から先程の瞳をのぞかせた。
あれと唯一異なるのは、その瞳に涙が浮かべられていたことだけだろう。
しかしながら、梵天丸は決してその雫を流そうとはしなかった。
「母様も……、怒りなさるのですか?」
まるで小動物のようで、とても頷くことはできない。
ひすいは全否定的に首を振った。
「お、俺ぁ怒らねぇよっ!……けど、小十郎さんはそういうところが厳しいのか」
ひすいは腕を組んで背面にそびえ立つ米沢城を振り返り様に眺めた。
今彼はいないだろうが、いつもは住んでいる城―――――
そう思っただけで、この城が輝き、煌めいて見えるのは考え過ぎだろうか――――…?
「厳しいです。小十郎は城の中では『鬼の側近』と呼ばれています」
「鬼の…、側近?」
「父様が名付けました。小十郎は父様にも色々と申しているみたいで、父様は嘆いておられました」
やっと落ち着いたのか、梵天丸は話しながら落としてしまった木刀を取り上げ、土埃を払った。


