「――――母様?」
「おぅわっ!」
いきなり誰かに声をかけられたひすいは驚いて、幹から滑り落ちそうになるが、そこは山賊の底力でなんとか持ち堪えた。
真下を見ると、袴姿の梵天丸が身長に合わせられた木刀を持って不思議そうに見上げていた。
ひすいは伊達家の家臣でなかったことに安堵しつつ、顔の横で手を振った。
「よぉ、梵天丸」
そう声をかけられて、梵天丸の瞳は輝きを増した。
「―――あぁ、やはりっ!母様ですね!こんにちは、今日は如何なる用件でございますか?」
「あ、え…えーと――――」
ひすいは無邪気に笑いながら齢五つにして多様な言葉を操る梵天丸にたじろいた。
―――――やっぱしそりが合わねぇんだよな…。
梵天丸が嫌いというわけではない。むしろ、好き以上の感情の域に入り込んでいる。
しかし、普段ひすいが使わないような言葉で話される、しかも年下にそうされるとなんだか奥歯がかゆくなる気分であった。
「よ、用件ってほどのもんじゃなくてよ……」
そう。そもそもひすいは用があってこの城に赴いたわけではないのだ。
適当な言い訳も見つからず、そのままお茶を濁していると、梵天丸の方から察した。


