「…………浮かびません。きっと大したことではないのでしょう。さ、先を急ぎますよ、政宗様」
「――――!もう終わりかっ?!今回は案外早いな…、諦めることが」
小十郎の切り替えの早さに度肝を抜かれた政宗は、彼らしからぬ、少々感情を乱してしまった。
「時として、諦めることも肝心なのです」
小十郎は笑った。
「………まあ、いいだろう。早く終わらせて、梵天丸の稽古に付き合わねばならぬからな」
「そうでしたね。では尚のこと、先を急ぎましょう」
そして、二人は城下の先へ進んでいった。
忘れ去られてしまったのはひすいのことなのだが、二人が政宗の好き嫌いに話を興じているときには既に、姿を消していた。
故に、二人はその気配を感じ取ることができずに話は取り残されたのである。
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一方、ひすいは二人を尾行した後、先回りして一足先に米沢の城に来ていた。
特にこれといって、誰かに用があるわけではない。
しかし、なんとなく来てしまったのだ。
ひすいは中庭が眺められる松に登り、そこから訳もなく、あろうことか股を開いて太めの幹にしゃがみ込んだ。
別に誰かを探しているわけではない。
しかし、視線はまるで人探しをしているかのように泳いでいた。


