そもそも策士の小十郎に政宗が勝てるはずがない。
それは自分でも言っていたのだからまさに自分で首を締めてしまったようなものだ。
今は同情の余地もない。
「いいですか?あれは貴方様を思ってのことだったのです」
「――――――…しかし、瓜は水っぽくて好かん」
政宗はまるで幼少の頃に戻ったかのように口をすぼめて小十郎の視線から目を逸らした。
そんな様子を見た小十郎は大袈裟にため息をつく。
「好かないのはわかります。……しかし、何だかんだ言って今はお食べになるのですから貴方様を尊敬しますよ」
親心を思わす口振りで小十郎は呟いた。
そんな彼に子供扱いされているのが気に食わないのか、知るかっ!と吐き捨てて政宗は先を行ってしまう。
小十郎は何も言わずにその後をついていった。
「はて…………」
ふと小十郎が思い出したかのように呟いた。
「私たちは一体何を話していたのでしょう?」
呟かれた言葉に政宗も立ち止まり、振り返った。
「…………そうだな。始めはこんな話題ではなかったはずだ」
「ですよね。―――…でも、思い出せません。私としたことが……、大失態です」
小十郎は全ての記憶を探っているのか、額に皺を寄せて考えていた。
こんな彼は珍しいと政宗は思う。
こう政宗が客観的に観ることができるのは、そもそも真に迫ることを早々に諦めていたからであった。
執着深いところもあるが、時としてこのようなところもあるのが彼の性格である。


