「何故嘘をつくのだ」




「はて、嘘とな?私が政宗様に嘘を申し上げたことなど一度もありませぬぞ」




小十郎は心外だとばかりに腕を組む。



政宗もそれに負けじと、自分より背の高い彼を上目遣いに睨んだ。




「吐(ぬ)かせ!お前は俺が元服以前の頃、あれ程瓜は入れるなと言ったはずだ!しかしお前は笑顔で頷いておきながら、執拗にぬか漬けを飯に出し、挙げ句の果てには味噌汁までにも入れてきたではないか」




「それは政宗様が好き嫌いをなさるからです。それに、輝宗様から貴方様が健やかに育つように命じられたことを無視するわけにはいきません」





「それは関係ないわっ!お前は父上の家臣ではなかろう!」





「そうでございます。ですが、私としても偏食はいけないと思っておりましたゆえ――――」





「瓜ごとき、偏食にはならん!」





「何を言いますか!一国の主となるお方が瓜をお避けになられては立派な武士(もののふ)にはなれませぬ」






「しかし、味噌汁に入れずともよかろう!あれの所為で俺はますます食えなくなった」





「もともと箸で端に寄せていた方が何を申されますか……っ!」





「くぅ………っ!」






どうやらこの口争いは小十郎が勝ったようである。