小十郎はそうですねぇ、と彼の癖である顎に手をあてて考える素振りをした。




「可愛い妹、ですかね……」




「そうか」




「政宗様、何故そのようなことをお訊ねになるのです?」





「特にない。別に構わないだろう?」





「えぇ、構いませぬ。ですが、私の見解から申し上げますと、政宗様は私がひすいさんをお慕いしているとお考えているのではありませんか?」






政宗は眉を反射的に動かした。



ただそれだけで何も言わない。



一方の小十郎は政宗の意を見透かしているといった顔でなお笑っていた。






この沈黙を埋めるかのように風が二人の間を吹き抜けた。




政宗の一つに束ねられた髪も、小十郎の短い髪もが風になびく。






暫くしてから、政宗はその沈黙を切るように鼻で笑った。






「……その通りだ、小十郎。お前は世に長けた策士だからな、その今の言葉も信頼できぬ」




「そんな、政宗様…」




言葉こそ動揺しているように聞こえるが、顔は変わらずあのままだ。



政宗が言うように、先程の発言は嘘だったのかもしれない。




人が真面目に質問をしているのに、それ相応の答えを小十郎がしていないことに腹が立つ。



しかし、ならばそれの逆――――



小十郎はひすいを好いているのではないかと考えると、心の中に焦りを感じる。




あのひすいの視線が自分の思うようなものであれば、自分が彼女の心に入る隙は一寸もない。