『あれ』の正体はひすいである。



ここ最近、城下に赴く回数が増えたのだが、来るたびにひすいは後ろからついてきていた。





この政宗の公務はただ単に城下のの監査をしているだけで、どこかに攻め入ろうとか、賊の改めをしようとか、そういう類のものではないのだが、何故か彼女に監察されている。





しかも、それは“みつめる”に等しいと秘かに政宗は感じていた。




どちらかをずっと見ているのだ。




だが何となく、その視線の先がわかってしまうようで怖い。




きっと、小十郎もそれを感じ、また政宗と同じように思っていることだろう。






そう思えば思うほど、自分が取り残されてしまったような気分で腑に落ちない。






「……小十郎は、ひすいをどう思うておるのだ?」






たまらず政宗は訊いてしまった。




この不審な会話を城下を流れる商人たちが聞きいているのは言うまでもない。



だがそんなこともお構い無しに道のど真ん中で話を続ける。





「ひすいさんを、ですか……?」




珍しくこの意を解せていないような顔をしていた。



まさかこんな質問をされるとは思いもしなかったのかもしれない。