奥州の山賊





あの人の背中が小さくなる……


米沢城の門に入る数歩手前で呼んだ。




「姉貴…っ!」




あの人は肩を一瞬震わせてからこちらを振り返った。





「ま、豆吉………」





あの人は驚愕の顔で、しかし次には目を伏せて言い放った。





「………私(わたくし)は姉貴などではございません。華です」





そうか、新しい名を貰ったのか。




「なら華さんっ!あんたに伝えたいことがある!」




「…………」





そうは言ったが、『華さん』は興味がないのか先へ進もうとする。





――――待ってくれ。





あんたに、必ず伝えないといけないんだ。






「あんたが好きだっ!」






華さんは足を止めて一気に振り返る。




「豆吉………」





そして、かつて彼女が尊敬した男から貰った俺の名を呼ぶ。





俺はいつまでもあんたが好きなんだと、目を細めて笑いかけた。






華さんはふっと微笑むと




「ありがとう…、豆吉」





と呟いて門をくぐってしまった。