「貴女に、政宗様の側室になっていただきたいのです」
見るからにひすいの瞳が見開くのがわかった。
確かに、無理もないだろう。
「―――…悪いが、俺は政宗さんの隣にいていいような身分じゃねぇ。それは絶対に変わらないことくらい、小十郎さんだってわかってるだろ?」
小十郎は小さく頷いた。
「ですが、私には策があるのです」
「策…?」
「酒造屋の娘になり、それから政宗様のもとへ…」
「冗談じゃねぇ!………そんなこと、そこの主人が了承するわけねぇだろ」
「いえ、何せあそこは私が贔屓している商人の家です。少しくらいの我が儘は訊いてくださるでしょう」
「けど…」
ひすいはためらいがちに俯いた。
―――――そう、
彼女には捨てきれないものがあるのだ。
「貴女が政宗様と他賊の接触を避けようとして退いてくれたのはわかります。全ては政宗様のためだということも……」
小十郎は一歩前へ進み、ひすいの手を自らの手で覆った。
しっかり握りしめた手からひすいの温かみを感じる。
「しかし、私としても政宗様――――愛する主君のためなのでございます。どうか、ご決断を」
小十郎が見つめるその瞳は揺れていた。
きっと、より悩みを増やしてしまったに違いない。
だが、こうするほかなかったのだ。
「………三日後、またここに来ます」
このままでは埒があかないと思ったのか、小十郎はひすいの返事も聞かないうちに馬でで走り去ってしまった。


