―――――何故あそこまで急ぐ必要があるのだ？
きっと小十郎はこれを契機に政宗の機嫌が直るとでも思っているのかもしれない。
―――――俺はそこまで童ではないぞ！
つまり、女を与えれば喜ぶ歳ではないというのだ。
そんな気遣いの欠片もない小十郎に対して遺憾に思っていた。
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その当日になり、大広間には奥に政宗が頬杖をついてふてくされたような顔で座っていた。
もはや、興味もない。
「小十郎でございます。その娘を連れて来ました」
襖の向こうで小十郎の声が聞こえた。
ここで返事をしないのは女にとって不安に思わせることだろう。
――――あの参謀はどうでも良いのだが―――――
仕方なく、ん、とだけ返事をしておいた。
随分無愛想な返事だが、これで側室の件が無くなってしまえば政宗にとって好都合である。
すると、いかにもわざとらしい誰かの大きなため息が聞こえたかと思うと襖がゆっくりと開いた。
その先には頭を下げる上品そうな女と小十郎がいた。
「さあ、お入りくださいませ」
小十郎が促すと、女は大広間に入った。
だがまだ深く頭を下げたままである。
