それからはより文学、武道と両者を偏りなく学び、今に至るのである。






一方、小十郎はというと……




―――――変化はこれといってない。




あの時の契りを忘れているのではないかと思う程せわしなく働いているが、あの『彼』である。



奥州一の参謀と謳われる者がたったひとつの契りを忘れるわけがないと政宗は思っていたが、ある日…――――





「政宗様、側室をお呼びしたいと思います」




突然発したその言葉に政宗は箸でつかんでいた煮物を落としてしまう。





「側室だと………?」




こいつは何を言っている?




「はい。私が贔屓にしている商人の娘でございます。きっと政宗様も気に入るかと…」




小十郎は無邪気に微笑んだ。




ひすいと似ている女を探したのか、そしてその女をひすいと思って一生愛せと言うのか。





―――――馬鹿を言うな。



彼女の代わりが何処にいようか?

自分はひすいしか愛せぬ身体になってしまったのだ。




「ご対面は明日(みょうにち)になります。お支度願います」




自分は一度も首を縦には頷いていないのに、事は何事も無いかの如く進んでいく。



そして、政宗が反論する間もなく小十郎は部屋を出ていってしまった。