小十郎は政宗の傍へ寄り、そっと眼帯を握りしめる手を両手で包み込んだ。
「いいえ。ひすいさんは貴方様を今もお慕いしていらっしゃるはずです」
「では何故俺のもとを離れたっ!」
「それは、貴方様のことを思ってのご判断でしょう…」
小十郎は瞳を閉じた。
澄ました聴覚が、小さな舌打ちの音を感じとった。
「ひすいもそう言っていた…。俺のためなら、それこそ傍にいるべきであろう!」
「左様でございます………」
小十郎もそれには反論しなかった。
ふと、彼にひとつの考えが浮かび上がる。
小十郎はそれを伝えるがため、包み込んだ手をぎゅっと押さえた。
「……………時間をください」
「何―――――」
瞼が上がったその瞳はしっかりと政宗の顔をとらえていた。
「私がどうにかいたしましょう。それまで、ご辛抱願いたい」
小十郎の真剣そのものの両眼から何かを感じとったのか、政宗は軽く頷いた。
「お前を信じるぞ、小十郎」
「はい、政宗様」
その朝、契りは交わされた。