奥州の山賊





―――――雀がさえずり始めた頃



小十郎は政宗が心配になって部屋の前まで来ていた。



ひすいに看病を委託したが、もしも悪化していたらと思うと居てもたってもいられなくなった。




襖に手をかける。





「政宗様、ひすいさん、おはようございます。小十郎でございます。ご容態はいかがでしょうか」




返事がなかった。



政宗はできずとも、ひすいは答えることができるはずである。



小十郎は最悪な状況を想像しながらそれを開けた。





「―――――――ま、政宗様…?」





中には政宗のみがいた。



その彼も寝床から出て、四つ這いになっていた。


奇妙すぎて、全くの予想外の光景に小十郎のきれる頭はついていけなかった。




「一体どうなされたのですか。ひすいさんは……?いえ、それよりも寝床から起きられてはいけません。まだ安静にとのこと……」




小十郎が政宗の肩に触れようとしたが、瞬時に腕が遮り、小十郎の手は払われてしまった。




「…………政宗様、ご説明を」




今の彼は誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出していたが、一国の主がこんな状態では政などもってのほかだ。


小十郎はその真意を問う。




「政宗様…」




そしてもう一度優しく彼の名を呼ぶと、顔だけをこちらにゆっくりと向けた。



長い髪から垣間見える彼の隻眼は光を失っているように思われた。