今は信じるしかないのかもしれない。
―――――…この人の可能性を。
「悪いが、俺はこいつ以外は愛さないと決めている」
政宗は悠に堂々と言い放った。
しかし、それを悠は鼻で笑って返す。
「貴方はそうかもしれない。けど、この女と貴方は絶対に一緒になることはないよ。貴方の正室は政略結婚で決まる」
ひすいの頭から部の悪そうな舌打ちが聞こえた。
見上げると、政宗は歯を食い縛っていた。
悠は満足そうに政宗を見下し、言葉を続けた。
「貴方は否応でも正室の子を産ませてあげなくてはならない。それは、彼女だけを愛すことに矛盾してると思わないかい?」
「………っ!」
痛いところを点かれたらしく、珍しく政宗の顔に焦りがみえた。
悠は何も言えなくなった政宗から視線を外し、今度はひすいを見つめた。
「嘘をつく大名より、僕と共にいた方が何より君のためになるとそう思わないかい?」
否定をさせない両手がこちらへおいでと促すように広がる。
ひすいはその手が恐ろしくなり、政宗の着物を掴んだ。
こんな男に負けている自分がいるのは許せないが、この男だけはどうも近寄りたくない。
あの手の届く範囲にいれば、また自分がどうなってしまうかもわからない。
あの時は必死に止められたが、次には弱い自分の声を出してしまうかもしれない。
わからない自分が現われてしまうようで恐ろしいのだ。